ボスニアでSDGs活動をするミレニアル世代・アレンさんに聞く

【SDGs10問10答】世界各地でSDGs活動に取り組む若い世代に、活動のきっかけ、各国のSDGs達成度、課題と展望、そして夢を教えていただく10問10答インタビュー。今回はボスニアで教育と民族分断の課題に取り組む、アレン・グダロさん(30歳)にお話を伺いました。
SDGsに関する活動は、そうとは知らずに私たちが行っている多くのプロジェクトの一部となっています。特に、目標13「気候変動に具体的な対策を」、16「平和と公正をすべての人に」、17「パートナーシップで目標を達成しよう」においてはそれが顕著です。なぜなら、若者向けに私たちが行うほとんどのプロジェクトが、その基礎として目標13、16、17の理念と目的を伴っているからです。もちろん私たちは、ボスニア・ヘルツェゴビナの社会が持つ地域的背景と、これらの目標との関連性を考慮しなくてはなりません。ここで強調しておきたいのは、ミレニアム開発目標(MDG)がまだ実施されていた時期に、私はボスニア・ヘルツェゴビナで行われた国連のインターンシップを通じ、SDGsに対する見識を深められたということです。そのため私は今、MDGからSDGsへ、どのように理念が緩やかに発展し、より大きく現実的な構想になっていったかを見比べることができるのです。また、2014年からワン・ヤング・ワールド サミット(注:2010年より世界各地で毎年開催される会議。各国各地域から世界をリードすることが期待される若者約2000人が集まり、各界のリーダーとのディスカッションや交流を通じ、世界が抱える課題に対する解決方法を探る)の様々なプロジェクトや会議にアンバサダーとして参加し、SDGsに関する理解をさらに深められたことを、深く感謝しています。SDGs活動は私にとって長期にわたるプロセスであり、私は先に述べたプロジェクトに参加する若者グループにSDGsを紹介できただけでなく、SDGsの目標について調査し私の率いるグループに提示するというタスクを彼らに与えることができたのです。
SDGsへの取り組みは、中央政府よりも意欲ある地域コミュニティが担っていると考えています。中央政府は他の多くの課題に集中しており、巨大な目標を実現できるだけの十分な人的資源・財源もありません。これが、わが国でのSDGsへの取り組みが、中央政府よりも地域コミュニティと緊密に連携している国際セクターにとっての関心事となっている、と考える理由です。時折、ボスニア・ヘルツェゴビナの様々な行政レベルが主導する、SDGsに関する政策も見うけられますが、広く知られてはいません。

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ボスニア・ヘルツェゴビナにおいて1990年代半ばから行われてきた民族紛争の負の遺産、そして和解プロセスの重要性を考えると、目標16「平和と公正をすべての人に」は依然としてわが国にとって最優先事項であると言えます。国家は脆弱で、教育システムの分断により民族が分断されており、中央政府は弱く、様々な民族政党によって管理された行政には、異なるレベル間の交流がほとんどありません。一方で多くの課題があるにもかかわらず、とりわけ目標16の実現を強く推し進める市民社会セクターの取り組みのおかげで、この目標に関しては明確な進歩がみられます。長い目で見れば、目標8「働きがいも経済成長も」や目標13「気候変動に具体的な対策を」が、社会にとって深刻な課題となっていくでしょう。
直接あるいは間接的に持続可能性の目標に取り組むすべての人は、私たち全員にとってよりよい世界を作ることを望んでいると私は考えています。私は人々をまとめること、少なくとも、幼いころから数多くのものによって分断されてきた人々を導こうと努力することによって、よりよい世界という夢に貢献することができます。分断は私たちが対処しなくてはならない負の遺産であり、SDGsは私たちがよりクリエイティブに問題に取り組む助けになります。個人としての私の目標は、更なる発展のための基礎を残し、私たちの間に依然として残る、見えない国境を消すことなのです。

 私を成長させる最善の方法は、自分の関心のある分野において有意義かつ専門的な経験を積むことを通じて、自らを鍛え続けることだと考えています。そして、自身を成長させるカギとなる要素は、より良い世界に向けて同じ情熱と意欲を共有する、世界中の個人やグループとネットワーク、そして強固な繋がりを作ることです。
私にとって成功とは、コミュニティの発展する様子、そしてともに働いた人が、私の仕事を通じて幸福になっている様子を見ることです。結局のところすべては人間関係ですが、ともに働く人々から学び、私自身がより良い人間となることもまた大きな成功と言えます。周囲の人々のために情熱を捧げること、そして周囲の人々から親愛と知識を受け取ることは、双方向のプロセスなのです。

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SDGsの達成は、膨大な努力と献身を必要とする大きなタスクです。世界はあまりに複雑で、多くの社会的・経済的・環境的な問題を抱えています。SDGs達成における最大の課題は、これらすべての問題をいかに乗り切るかを学ぶこと、そしてSDGsがすべての人にとってより良い人生を実現するために注目すべきポイントであると、人々に確信してもらうことです。仕事とそれに必要な資源の膨大さに圧倒されるのではなく、地域レベルで目標を達成することに焦点を当てましょう。先述したように、このような困難を乗り越える方法は、世界中でSDGs実現に献身的に取り組むコミュニティと繋がり、ネットワークを作り、強い絆を結ぶことです。このネットワークが発する声は、達成の途上に待ち受ける試練を乗り越えて進むための強力なツールとなります。
新型コロナウイルスの流行は、移動し直接人と触れ合うことという、私の仕事の重要な部分に間違いなく大きな影響を与えました。当初はコロナ禍がすぐに終息することを望んでいましたが、やがて現状に適応し新たな対処法を学ぶ以外に道はない、と気づいたのです。実におかしなことですが、この状況は新たな仕事の領域を切り開き、新たなパートナーや事業と繋がる助けとなりました。しかし一方で、ほどなく世界中の人と顔を合わせてつながり、ともに働くことができるようになることを私は望んでいます。対面での交流は、私たちを結び付け、より簡単に共通の目標を見つけられるようにしてくれます。

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地域的な背景に関して言うと、10代の頃の私は「1つ屋根の下の2つの学校」と呼ばれる教育制度の一部でした。それはわが国における長期の分断と紛争の産物であるだけでなく、新たな民族分断システムが実施された結果が可視化されたものでもあったのです。民族によって立場の分かれる政治的テーマにおいては、校内の子供たちが民族ごとに分断される様子を見るのが日常茶飯事でした。私を含む他の人々にとっては、それは取り組むべき課題があまりにも多いという悲しい証です。私は政府がこの問題にしっかりと対処することには、ほとんど期待していません。なぜなら、政治的議題を通じて国内の分断を助長するような政府でしかないからです。

その一方で、若者は自分たちのニーズを訴える声を上げてきました。若者たちの取り組みの一部は高校での民族分断を終わらせることに成功し、おびえていたり、より良い教育制度を得るため戦う力がないと思い込んだりしているであろう他の若者たちに対して、強力な激励となりました。

教育に対するもう一つの脅威は、実は現在の教育そのものです。奇妙に思われるでしょうが、子供たちが学校で何を学ぶか、それが彼らの将来の生活にどのように影響するかに関しては、現状ほとんどコントロールすることができていません。教育制度と社会の労働市場のニーズとの間には、大きなギャップがあるのです。子供たちはその情熱を用いる領域も、彼らの望むスキルを実現する領域も限られています。これは大きな問題であり、真摯な取り組みが求められます。私たちは若者たちにわずかなものしか与えない、「箱の中」の教育システムに疑問を投げかけねばならないのです。
私は国際的なこと、地球を一つにまとめることすべてを愛しています。世界を探検し、人々を結び付け、皆にとってより良い居場所を作ることは私が子供のころから続く情熱の対象であるのみならず、私が成長し、人間についてより深く理解する助けとなりました。なんと世界は複雑なことか!その意味では、グローバルネットワークを作ること、同様の課題に取り組んでいる組織を強化すること、すべての人に平和と正義と共通の目標達成をもたらすためともに協力することが、私の夢だと言えるでしょう。世界を見て、旅し、経験し、共通の課題に取り組み、地域のコミュニティのためプロジェクトを興す、そんな機会を得た若者が率いるグローバルネットワークを、私は見てみたいのです。
まず、私そして私たちの国に興味を持ち、時間を割いて下さったことに感謝したいと思います。私はこの記事を読んだすべての人に、私が自分の目標に向かって挑戦しているのと同じように、自身の望みと目標に取り組み続けることを勧めたいと思います。時にそれは困難であり、諦めるのは簡単なことです。だからこそ、私たちは再び立ち上がり、取り組み続けることを学ばねばならないのです。

私の伝えたいメッセージは以下の通りです。

「大きな夢を持ち、現実を見据えて、一生懸命に取り組むこと。そして、夢にたどり着くまで、それを繰り返すこと。」
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